火熾しを科学する (1)

音丸

2015年04月16日 12:00

タープの張り綱」が好評でしたので、調子に乗って引き続きHow toモノを…。(笑)

今回は火熾しにおける“熱”のハナシです。


●火が燃えるための3要素


火が燃えるためには以下の3つが必要です。

1.熱
2.燃料(薪、炭)
3.酸素


このうちのどれか一つが欠けただけで燃えません。


言い換えれば、どれか一つが絶たれれば消えてしまいます。

水をかけると火が消えるのは、温度の低い大量の水が、燃焼に必要な熱を奪うためです。



●熱のハナシ


ここから先は私独特のちょっと変な表現になりますが、分かりやすくするための例えと思ってご容赦ください。


火熾しという作業は『熱の戦い・温度差のせめぎ合い』です。

高温の炎が、常温の燃料に勝てば、燃料に火が点きますが、負ければ着火せずに消えてしまいます。

勝ち負けの要因は“温度”と“大きさ”です。(注:話を分かりやすくするため、敢えて“時間”は省きます)

10の温度を有する1の大きさのマッチの炎は、1の温度を有する7の大きさの木片を燃やすことができますが、1の温度を有する30の大きさの薪には歯が立ちません。

つまり、薪や炭に着火させるためには、燃料を小さくするか、炎を大きくする必要があります。

薪を割って木片にしたり、小枝に着火するのは、当初戦う相手(燃料)を小物にして確実に勝つ(=燃え上がらせる)ため。

マッチ(400℃)よりもライター(800℃)、ライターよりもバーナー(1,500℃)を使うのは、得物の威力を上げて(炎を大きく、温度を高くして)勝つためです。


小物を打ち負かして炎を大きくすれば、中ボス(細い薪)を倒すこともできます。

さらに炎が大きくなれば、大ボス(太い薪)を倒すこともできます。



逆に、炎が小さいうちに温度の低い大きな薪をくべれば、たちまち大きな薪に熱が奪われ、炎は消えてしまいます。

先に述べた“火に大量の水をかけて消火する”のと理屈は同じです。



また、広葉樹や備長炭は密度が高いため、温度変化が緩慢で、着火するまでに時間がかかります。

したがって、大きな炎を持続できる態勢が整っていないうちに戦いを挑むと負けてしまいます。


具体的に言うと、最初は、密度が低く、火が点きやすい針葉樹の薪、ナラ炭の欠片などに点火し、炎が大きくなったら(温度が高くなったら)広葉樹薪や備長炭を投入します。



●余談


実は私、昔は雑誌編集者をしておりました。

在職中に手がけたものの一つが「サバイバル・スキルズ[究極の生存技術教本]」でして、退職後はライターとして「サバイバル・スキルズ2」および「サバイバル・スキルズ3」の翻訳を行ないました。

なにぶん昔の話なので、今となっては古本でしか入手できませんが、機会がありましたら目を通してやってください。


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